時間疎外
己の魂を
時の支配者に
売り渡すということ
無味乾燥な
秒針の流れの中に
心の在り処を見出だすということ
それが
大人になる
ということなんですね、先生
時は魔法
魔法は時の変換
時の深層より萌え出ずる精神
存在と、時間──
ああ
哀れなりアワレナリ
己の<時>が薄らいでいく…
分刻みに
切り裂かれ
みじん切りにされた心…
心臓は
腕時計に
取って代えられてしまった
権力は
時計の時刻表示の中に
人々は<時>の失われた機械人形に──
そうして
人々は皆、時計王国の
隷属民になってしまうのですね、先生
ここには
魔法はいらない
魔法を必要とされていない
時間がすべて
精確な時刻の鼓動が
この世界のすべてなのよ
わたしもまた
時の支配者に
魂を売らなければならない
<時>を捨てて
疎外された時間の中へ
己の精神を忘却の彼方へ──
だからお願い
魂を売る代わりに
わたしに幸福を下さい
わたしの魂が
平凡な幸福と
等価交換でありますように…