電波女と呼ばないで

体内に蓄積された毒電波を吐き溜める場所

再-生

真っ暗なトンネルの中を歩く



蝋燭一本の明かりを頼りに
おそるおそる前へ進む



足音が静寂を過ぎ越して
そそくさと立ち去っていく



水滴の垂れる音が
不自然な反響を呼んで
虚無の鼓動をざわつかせる



辺りは見渡す限りの闇
しかし、それは生きているようにもみえる



光なき空間に棲息する存在
それはわたしの身体を取り囲み
絡みついているみたい



──早くこのトンネルを抜けないと



あせりと不安が足を鞭打ち
漠とした暗色の海の中を泳がせる



だが、出口は見えない
ふと、立ち止まる



──わたしはなぜここにいるのだろう?





   ゜  ・
  .  †  .
      ∵
    *
   ・





声が聞こえる
かすかに聞こえる
なんだろう?



「お前はもう…」
「お前はだが…」
「お前はやはり…」
「お前はそれでも…」
「お前は…行くのか?」
「お前は…」
「お前…」
「おま…」



声は消えた
わたしはその場にしゃがみこみ
悩んだ



わたしはなんとなく理解した
この先に何があるのかを──



だから、わたしはもう行きたくない
と思った



行けばきっと…



周囲の暗闇が途端に心地よく感じた
それはわたしを取り囲んで
深く包み込み
わたしを優しく愛撫していた



そう、これでいいんだ
これでいいの



わたしは蝋燭の火を消して
まぶたをゆっくりと閉じた